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No.25 強さの秘訣はメンタル!?

バレーボール元全日本代表主将:米山一朋氏 (プロフィールはこちら)

ブラジル、リオデジャネイロのオリンピック・パラリンピック。地球の反対側で歴代最多となるメダル獲得に、日本中が大いに盛り上がりました。元全日本男子バレーボールでソウル五輪に出場された名セッター米山一朋さんも、そんなオリンピックを通して貴重な体験をされてきたひとりです。現役引退後もコーチ、監督を歴任して、今なおスポーツに情熱を傾けている米山さん。桜の名所でもある小田原城下にその米山さんをお訪ねして、ご自身のオリンピック体験を振り返りながら、スポーツにまつわる体と心の楽しい話をお聞かせいただきました。

米山さんがバレーボールを始めたきっかけも、やはりオリンピックだったそうですね?

草野球をしたり水泳教室に通う小学生でした。とくにバレーをしていたわけではないんです。それが、ちょうどミュンヘンオリンピックの年でした。父がテレビで男子バレーの準決勝を観ていたんですね。2セットを先取されて、「もうだめだ」と父はそこで観るのをやめてしまった・・・それが翌朝にフルセットで逆転勝ちでしょ、子ども心にかっこいいと思いましたね。その後、旧東ドイツを3-1で破り、見事に金メダル。それまで女子のスポーツとばかり思っていたバレーボール、それを日本男子が世界の強豪を相手に逆転劇を演じて、最後には優勝。もうそれはかっこよかった。だから自分もこういう風になりたい、と、中学に入ってからバレーの白いボールを手にしたんです。

夢が叶ってソウル五輪に出場された米山さんですが、そのときの思い出を尋ねると、意外にも開会式の記憶が鮮明に残っていると伺いました。

入場行進の順番を待つ間、よく見ればあそこにカール・ルイスが居る、あああれは・・・となるわけです。世界のスーパースターたちと同じところに立って同じ空気を吸っている、ただそれだけで足が震えるというか、興奮が止まりませんでした。そして、いよいよ入場行進。メインスタジアムの大歓声に包まれて、ついに来たぞと、オリンピックに来たんだぞという実感がこみ上げてきました。
途中で聞こえてきた「日本、頑張れ!」の大きな声援に、言いようのない力をもらえたように思います。

個人が優れている、チームワークが優れている。はたしてどちらが強いチームなのでしょう?プレーヤーとして指導者として、豊富な経験をお持ちの米山さんにズバリお聞きしました。

優れた選手の揃ったチームは、たとえチームワークがなくても、圧勝するんじゃないでしょうか。
ただ、競り合いには弱いと思いますよ。粘りがない。競ってきたときは、やはりメンタルの勝負。お互いがお互いを認め合い、チーム全体で個々の気持ち、やる気を高めていけるチームは、競り合ったときに強さが出てきます。だから監督やコーチは、それぞれの個人技を見抜いて適材適所に配置しながら、コミュニケーションの取れるチーム作りをする。コミュニケーションがうまく取れているかどうかは、チーム力を推し量るひとつかもしれません。

試合を「あきらめないこと」とは?いったい何が選手を支えているのですか?

よく「本番に弱い」と言いますが、プレーに自信がないからだと思うんです。だから、できるまで練習をする。「できる=良いイメージ」を、もっと大切にするといい。
できていないときは、なるべく具体的に何が足りていないかを伝えるようにしています。そして1回でもできるようになったら、何回も続けてできるようになるまで練習をする、そのときに何が良かったのかも言葉にするようにしています。練習で完璧にできるようになっていれば、試合で不安になることもないし、本番にも強くなれます。
今回のオリンピック、女子レスリングの最後10数秒での逆転劇などは、まさに「最後まであきらめない」から勝つことができた。それはバレーボールでも同じです。
ボールがコートに落ちる、デッドになるその瞬間までけして望みを捨てない。たとえレシーブがうまくいかなかったときでも、9m×9mのコートの中、残りの5人が声を掛け合いフォローしていく。まさにチーム力の部分ですが、そうした気持ちの強い、心折れない個人、チームを目指して、監督やコーチもあきらめることなく、粘り強く指導しているはずです。

試合の最中でも、指導者の一言で開き直ることができるそうですね?

強い気持ちによって試合の流れが変わることがあります。女子バドミントンの決勝戦は、そうだと思うんです。追い込まれたときは、どうしても気持ちに余裕がなくなる。気持ちに余裕がなくなるから、体が固くなって、思うように動かなくなり、できていたはずのプレーができなくなる。点差が開いて負けていたとしても、まだ負けたわけじゃない。相手が2点、3点取る間に、5点、6点取ればいいんじゃないかと。何も負けたわけじゃない、思い切っていこうと。それでも負けたら仕方がないじゃないかと。こうした言葉ひとつで、選手の気持ちに余裕が生まれ、プレーが変わってくるんです。

企業チームなど大所帯なところでは、専属のトレーナーを帯同させる時代。スポーツケアの今を伺いました。

私が引退してからですが(笑)、ほとんどの企業チームがメディカルトレーナーやアスレチックトレーナーを帯同させるようになりました。先進の取り組みをされているチームの中には、鍼灸師の免許などの国家資格を持ったトレーナーもいらっしゃいます。フィジカルケアはもちろんですが、むしろ監督やコーチ、スタッフには言えない悩みを相談できる、心を許せる存在として、チームのメンタルケアにも大きく貢献されているように思います。体をほぐされることでリラックスできているのか、弱音や本音を言いやすいんじゃないでしょうか。体と心のバランスに鍼灸はとても有効に働いている、そんな印象を持っています。

普段楽しむレベルでも効果的なトレーニング方法があれば知りたいですね。

体幹を鍛えることですかね。体の幹(みき)と、読んで字のごとくです。バレーボールに限らず、すべてのスポーツ、そして日々の健康な生活につながるものだと思います。健康じゃないと、仕事はもちろん、趣味も楽しむことができない。人生を楽しく過ごすには、やはり健康は大切です。スポーツ選手に限らず、日頃から体調を気にする、たとえば体重の変化を毎日チェック、気にすることも、とても良い健康習慣だと思います。スポーツに汗を流すことも良いことですが、日々の生活の中で健康な体づくりの習慣を心がけること、それが第一だと思います。
そこから強い気持ちも生まれてくるような、そんな気がします。
リオデジャネイロから東京にバトンタッチされ、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会まで4年を切りました。これからますますスポーツが盛んになり、健康生活のためにスポーツを始める人も多くなることでしょう。健康的な毎日に、あきらめない心と開き直りの精神。米山さんのお話には、毎日忙しく暮らす現代人に欠かせない、体と心のサプリメントが詰まっているようでした。
 

米山一朋(よねやま かずとも)氏プロフィール

1961年生まれ。東京都出身。法政大学卒業後、1984年富士写真フィルム(株)に入社。1985年・1989年のワールドカップ、1988年のオリンピック(ソウル)、1990年の世界選手権やワールドリーグなどで名セッターとして活躍。その後、指導者として全日本シニア男子コーチ、全日本ジュニア男子コーチ、嘉悦大学女子バレーボール部監督などを歴任する。主な監修書に『チーム力がUPする!バレーボール攻撃戦術&練習メニュー80』『考える力を身につける バレーボール練習メニュー200』(池田書店)など。
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