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けんこう定期便

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No.3 記念講演「元気の源は日本型の食生活から」

乱れている、日本の食生活の現状。

本日は創立60周年記念、本当におめでとうございます。本日のテーマは「元気の源は日本型の食生活から」ですが、最近、朝ごはんや家族の食事を写真に記録した本が出版されました。そこにはこれが日本の食の現状かと思うようなものがたくさん載っており、私はそれを見て、めまいがする思いでした。何とかしなければ食事がダメになってしまう…、日本の国は無くなってしまう…と本当に強く感じました。
朝はカップ麺や菓子パンを家族それぞれが一人で食べ、「行ってまいります」の挨拶もなく出かけて行くというように、どれが「日本型の食生活」なの?というくらい今の日本では乱れています。
また、ある広告会社が行った調査によると、日本人の4/5くらいは、日本型の食事ではない生活をしているだろうとのことです。私たち料理研究家は、今の日本の食事や食生活を本来の姿に戻す働きかけをしなくてはいけないと、ひしひしと感じています。

日本型食文化は、お米中心の食事。

食事に何が足りないか、何をとりすぎているかなどを計算して知ることは大切ですが、あまり数字にこだわらず、あくまでも目安と考えたほうがいいでしょう。多くの情報の中からいいものは試してみて、選択する力を養うことも大切です。生き物の命をいただくことへの感謝、ご飯を作ってくれた人の気持ちを考え真摯な態度で食べること、そして、物をむやみに捨てないことは、人間としてあたりまえに大切なことですね。

四季折々の、その土地の作物。

主菜の次は副菜ですが、四季折々のその土地で採れるような野菜類を主にして作られます。夏の暑いときはたとえば茄子のような体を冷やすような煮物、5月頃ですと山菜などを使います。タンパク質があまり含まれず、ちょっとしたものを副菜として作ります。
そして、副々菜です。要するに漬物のようなもので、小さなものをちょっと付けます。
主菜の「ごはん」と副菜と副々菜に合った汁ものがここに付くわけですが、普段は味噌汁が付きます。こうした日本の伝統的な食事をする家庭が少なくなっています。

次代を担う子どもたちの健康が危ない。

今の食生活がどうなっているかといいますと、主食はパンやスパゲティで洋風のものが主になっています。主菜は肉類たっぷりのハンバーグステーキやローストビーフで、汁ものはポタージュやスープ類、味噌汁はあまり登場しなくなっています。
心配なのは戦後、親御さんたちは洋風の食事が良いと教わり、育ってきましたので、子どもたちもそれが良いものだと影響を受けています。近年では、日本でもファストフードが人気を集めています。
「食」で怖いのは、子どもたちが6歳なるまでに、将来の食べるものが決まってしまうことです。これは京都大学大学院 農学研究科の伏木享教授の説で、先生はたくさんの本も書かれています。
6歳までの間に穀物をたっぷり食べ、魚を主にして季節の野菜や海藻などを食べ続けて体を作っていくことが大切なのに、食べなければいけないものを食べないまま、大きくなってしまいます。メタボリック症候群がどんどん増えているのも、そうしたことに一因があると思います。
私たちの年代は、歩くことが大変というほど太っている人は少ないと思います。それは6歳までに日本型の食事を食べ続けていたからであって、今の子どもたちが生活習慣病になってしまうのは、食や食生活の教育をしない社会も、また、気がつかない親もいけないと思います。

戦後、学校給食も、洋風化が進行。

子どもの食事という点で重要なものの一つが学校給食です。第二次大戦後の学校給食では、アメリカ的な食事が良いと教えられました。その頃、私は育ちましたが、学校給食では鼻をつまんで飲むようなミルクと、食べるものも油炒のようなものが多くなりました。当時の日本は、政策としてキッチンカーを走らせて油炒めの料理を推奨していましたが、そういう食生活がだんだん広がってメタボリック症候群につながってきたわけです。
ところで、脂が多い食べ物を、おいしいと感じることはありませんか?つまり普通の牛乳を飲むよりも濃い牛乳を飲むようになり、もっと濃いものが生クリームです。シチューを作るときに、牛乳を使うよりも生クリームを入れると、すごく口当たりが良くなっておいしくなるわけです。そうすると、そちらのほうにどんどん傾いていって、日本人の体は高脂肪・高タンパクのものが好きになっていくわけです。
栄養を教える学校でも、なるべく穀物はあとから食べて、お腹をいっぱいにするためにはタンパク質の多いものから、まず食べようということになりました。

日本の伝統食の基本は「だし」。

日本の伝統食の良さの一つは、「だし」だと思います。ここで、簡単な「だし」の取り方をご紹介しましょう。
昆布とかつお節がどちらも7グラムくらい、つまり昆布なら7センチくらい、かつお節なら軽くひとつかみです。それを5カップ1リットルの水に入れ、火にかけてください。小さい火にかけてコトコト湧いてきたら、3分間コトコト炊いてください。そして火を止めます。3分間おいて、そこからが大切なところです。昆布はまず出してください。ちょっと大きい茶こしを用意して濾します。そうすると本当にきれいな琥珀色の「だし」がとれます。それから、ほんのひとつまみの塩を、そこに入れます。そうするとタンパク質が、スーッと固まることによって、濁ったり匂いが付いたりしにくくなります。それを冷まして冷蔵庫に入れると、2日や3日は十分おいしく食べられます。
ですが、「だし」を「だし」だけに使うということを誰が決めたのだろうと私は思います。私は朝起きますと、まず「だし」を取り、温かい「だし」を飲みます。そうすると、「だし」が体を通って行くのがわかるのですね。「だし」を飲むと、体がすごくスッキリしますがそのはずです。その「だし」には添加物はまったく入っていませんし、上質のミネラルとタンパク質がいっぱい入っているわけですから。

料理にこめる心こそ、大切にしたい。

家族全員が一日一回でもなごやかに食卓を囲み、一緒に食事をして、「いただきます」、「ご馳走さま」という昔ながらの家庭に戻していくことを、私たちの年代が考えなければいけないことです。これを忘れてしまっては、日本の社会は無くなってしまいます。
私は日本という素晴らしい国に生まれましたが、日本人は今、非常に殺伐になっています。その原因は食べることに優しさが無くなっているからだと思います。
一生懸命作ったお料理は、心が伝わらないわけはありません。そういう心のこもったものを皆で食べることが、良い社会を作る源になっていくと思います。日本が優しい人たちの集まりであった昔のように、人を思いやる心を取り戻してほしいと願っております。

清水信子(しみずしんこ)先生プロフィール

料理研究家。旬の素材を生かした懐石料理から家庭料理までを幅広く手がけ、日本の食文化である「和食」の伝統と智恵を活かし、若い世代のライフスタイルに合わせた食生活の創造と研究に熱い思いを注ぐ。「NHKきょうの料理」をはじめ、テレビ、ラジオ、雑誌、料理講習会で活躍中。「和食かんたんおけいこ帖」など著書多数。東京都在住。
■著書紹介
清水信子手づくりのおせち
(家の光協会)
とっておきの和食おいしいひみつ
(家の光協会)
和食かんたんおけいこ帖
(NHK出版)
基本の和風こんだて
(主婦と生活社)
いいことあったら「ハレの日」ごはん
(主婦と生活社)
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