新型コロナウイルス感染症に対する対応と院内感染対策(第6版)
目次
新型コロナウイルス感染症に対する対応と院内感染対策(第6版)
公益社団法人日本鍼灸師会危機管理委員会
令和2年 1月28日 発出
令和2年 2月 5日 改訂
令和2年 2月24日 改訂
令和2年 3月31日 改訂
令和2年 5月 8日 改訂
令和2年11月25日 改訂
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はじめに
世界保健機関(WHO)の緊急委員会は、1月31日未明(日本時間)、中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎の発生状況が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC: Public Health Emergency of International Concern)」に該当すると発表した。
その後、全世界的かつ急激な勢いで感染者数が増加し、欧米では医療崩壊の危機を招き、我が国でも4月7日には新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が発令され、現在も感染拡大の第3波と呼ばれるような患者数の増加傾向を示し、予断を許さない状況が続いている。
以下の内容については国立感染症研究所 感染症疫学センター 国立国際医療研究センター 国際感染症センターから発出、6月2日に改訂された「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」、5月7日に一般社団法人日本環境感染学会から発出された「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版」、9月4日に厚生労働省から発出した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第3版」、国立感染症研究所から5月29日に発出された「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」を基に作成しており、今後最新の情報を基に変更されることがある。
待合室、問診・移動時、施術室での感染対策
①外来受診する患者と付き添い者には、入り口付近で検温を行い、咳嗽などの呼吸器症状がないかを確認することが望ましい。また、症状の有無にかかわらずマスクの着用を促す。
②待合室および施術室では、患者同士が一定の距離を保てるように座席位置、来院時間などを調整し、濃厚接触とならないように配慮する。スタッフは患者に接する際にサージカルマスクを含めた標準予防策(※)を徹底する。 また、対面で問診・施術を行う場合は、マスクに加えゴーグルやフェイスガードの使用が望ましい。
※標準予防策参考リンクhttps://www2.huhp.hokudai.ac.jp/~ict-w/kansen/2.01_hyoujunyobousaku.pdf
③待合室および施術室内の整備と対策
●受付のカウンター上に待合室と仕切る透明ビニールを垂らすかアクリルのパーティションを置く。
●院内全域の換気を行う。
●待合室の椅子を離して設置する。
●できるだけ物を片付け、消毒液を含むクロスや紙で拭きやすくしておく。
●患者が触れやすいドアノブ、便座、流しハンドルなどは定期的に清拭する。
※その他、危機管理委員会発出「新型コロナウイルス感染防止ガイドライン」を参照。
新型コロナウイルス疑い例の鑑別
《 新型コロナウイルス感染症を疑う症状 》
①感冒様症状・・・発熱・咳・咽頭痛・鼻汁・鼻閉・頭痛・関節痛・筋肉痛
②肺炎症状・・・全身倦怠感・呼吸困難
③消化器症状・・・下痢・嘔気・嘔吐
④その他の症状・・・味覚・嗅覚障害・眼痛・結膜の充血
※必ず予診を行い、上記症状を総合的に判断し、スクリーニングを行うことが望ましい。
《 濃厚接触者の定義 》
●「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間(*1)に接触した者のうち、次の範囲に該当する者である。
・ 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
・ 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・ 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・ その他: 手で触れることの出来る距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等、個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。(*2)
(*1) 「患者(確定例)の感染可能期間」とは、発熱及び咳・呼吸困難などの急性の呼吸器症状を呈した 2 日前から隔離開始までの間、とする。
(*2) 参考リンク
NIID国立感染症研究所 Q&A
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9582-2019-ncov-02-qa.html
※上記の疑い例に遭遇した場合、施術はおこなわず、速やかに最寄りの保健所への電話相談、または専門医療機関への電話相談後の受診を勧める。
《 帰国者・接触者相談センター等に相談する目安 》
●少なくとも以下のいずれかに該当する場合。
☆息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合
☆重症化しやすい方(※)で、発熱や咳などの比較的軽い風邪の症状がある場合
(※)高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)等の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方
☆上記以外の方で発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続く場合
(症状が4日以上続く場合は必ず相談。)
※保健所管轄区域案内
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/
※厚生労働省の電話相談窓口(コールセンター)
電話番号 0120-565653 (フリーダイヤル)
受付時間 9:00から21:00 (土日・祝日も実施)
※各都道府県の新型コロナウイルスに関するお知らせ・電話相談窓口
https://www.kantei.go.jp/jp/pages/corona_news.html
施術所で新型コロナウイルス感染症陽性者が発生した場合における対応について
● 施術所において新型コロナウイルス感染症陽性者(患者、施術者)が発生した場合、保健所等の指導の下で消毒等を行うまでは、施設の使用を自主的に制限する。ただし、陽性者の動線上ではないところや感染リスクが低い部分については、使用を継続することができる。
● 施術所の管理者が標準予防策(サージカルマスクの着用及び手指衛生)を徹底している場合は、自主的な就業制限などを行う必要はないが、感染者の施術に携わった者には、毎日検温の実施、健康管理の強化、保健所等と十分な協議を行うこととする。
● 上記に該当しない場合は、保健所等の指導に従って消毒等を行い、濃厚接触者については、必要があれば検査を行う。また、2週間を目途に休業することが望まれる。
※「濃厚接触による自主的な就業制限施設の使用制限に関する日本医師会の考え方」より
http://dl.med.or.jp/dl-med/kansen/novel_corona/2019chi_498.pdf
院内の消毒について
●院内においては、患者周囲の高頻度接触部位などはアルコールあるいは0.05%の次亜塩素酸ナトリウムによる清拭で高頻度接触面や物品等の消毒の励行が望ましい。詳細については、「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド」等を参考にする。
※医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第3版
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide3.pdf
●高齢者施設、不特定多数が利用する施設内、自宅等において、患者が発生した際、大がかりな消毒は不要であるが、長時間の滞在が認められた場所においては、換気をし、患者周囲の高頻度接触部位などはアルコールあるいは0.05%の次亜塩素酸ナトリウムによる清拭で高頻度接触面や物品等の消毒の励行が望ましい。
●新型コロナウイルス感染症の疑いのある患者や新型コロナウイルス感染症の患者、濃厚接触者が使用した使用後のトイレは、次亜塩素酸ナトリウム(1,000ppm)、またはアルコール(70%)による清拭を毎日実施することを推奨する。急性の下痢症状などでトイレが汚れた場合には、その都度清拭する。体液、血液等が付着した箇所の消毒については、感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き(SARSやMERSの箇所)を参照すること。
https://www.mhlw.go.jp/content/000548441.pdf
●症状のない濃厚接触者の接触物等に対する消毒は不要である。
●その他、消毒方法については厚生労働省HP「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」を参照。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
参考リンク
※新型コロナウイルス感染症に対する感染管理 改訂 2020 年6月2日
国立感染症研究所 国立国際医療研究センター 国際感染症センター
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/2019nCoV-01-200602.pdf
※次亜塩素酸ナトリウム溶液の作り方
https://www.city.meguro.tokyo.jp/smph/kurashi/hoken_eisei/shinryo/yobo/jiaensosannatoriumuekinotukurika.html
※接触、飛沫予防策参考リンク
https://www2.huhp.hokudai.ac.jp/~ict-w/kansen/2.02_kansenkeirobetuyobousaku.pdf
高濃度エタノール製品の使用について
手指消毒用エタノールの供給が不足していることから、やむを得ない場合に限り、高濃度エタノール製品を代替とすることは差し支えないが、以下の要件を満たすものに限る。
①アルコール事業法に規定する特定アルコールを取り扱う既存の事業者又は同法に規定する許可事業者から購入したアルコールを用いること。
②エタノール濃度が原則70~83vol%の範囲内であること。高濃度のものは精製水等で同範囲に薄めて使用すること。
③含有成分に、メタノールが含まれないものであること。
④医薬品医療機器等法に規定する医薬品又は医薬部外品に該当せず、その製造・販売等について同法による規制を受けないこと。
⑤容器の清浄度に配慮するなど、衛生的な管理に努めること。
⑥ 購入製品がこれらの要件を満たすことを当該事業者に確認すること。
※ご使用の際は、要件に十分注意し理解したうえでご使用ください。
また、類似品として「高濃度」ではなく「工業用」もあり、有害な「メタノール」を含んでいるものがあります。大変危険ですのでご注意ください。
※「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う高濃度エタノール製品の使用について」より
http://dl.med.or.jp/dl-med/kansen/novel_corona/2019chi_491.pdf
《 参考 》「次亜塩素酸ナトリウム」と「次亜塩素酸水」の違いについて
●次亜塩素酸ナトリウム(いわゆる漂白剤)
・薄めても「次亜塩素酸水」にはならず、人体には使用不可。
・洗面所、浴室、ドアノブなど施設の物を消毒する際に使用可能。
・次亜塩素酸ナトリウムを0.05%に水で薄めたものであれば清拭する消毒液として有効である。※ゴム手袋などを着用し、換気も必要。
●次亜塩素酸水(濃度・pHの調整が難しく、自作では安全の保障ができない)
・人体への使用は安全性が保障されていない。
・使用する際は十分な量で消毒したいモノの表面をヒタヒタに濡らし、拭き取る。
・ただし、使用箇所の事前の洗浄が必須。手指消毒では、手洗いした後に使用しなければ、
汚れなどが残っているところでは殺菌能力が無効化されてしまう。
・非常に不安定な化学物質であり、開封後は早めに使い切ることを心がける。
※新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌方法(一覧)
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/shodoku_jokin.pdf
寒冷期および寒冷地における対策について
①寒冷環境における換気の実施
●機械換気による常時換気を行う。
●機械換気が設置されていない場合は、室温が下がらない範囲で常時窓開け
(室温は18℃以上が目安)
●連続した部屋等を用いた2段階の換気(使用していない部屋の窓を大きく
開ける)やHEPAフィルター付きの空気清浄機の使用も有効。
②適度な保湿(湿度40%以上を目安)
●換気しながら加湿を行う。(加湿器を使用)
●こまめな拭き掃除を行う。
《 参考 》
※2段階換気の例・・・待合室および施術室を暖房し両室間に開放口を作る➡待合室の窓を適度に開放し、施術室において換気扇を使用する。
※室温の低下への対応例・・・ベッドに電気毛布等を敷く。
※寒冷な場面における感染防止対策の徹底等について
(内閣官房 新型コロナウイルス感染症対策推進室) https://www.mhlw.go.jp/content/000695178.pdf
参考リンク
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第3版
https://www.mhlw.go.jp/content/000668291.pdf
全日本鍼灸学会 鍼灸施術における新型コロナウイルス感染の拡大防止のための注意点
https://ssl.jsam.jp/contents.php/010000G5dmlk/
新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領
国立感染症研究所 感染症疫学センター 令和2 年5月29日版
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/2019nCoV-02-200529.pdf
新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド 第2版
http://dl.med.or.jp/dl-med/kansen/novel_corona/shinryoguide_ver2.pdf
新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療所・病院のプライマリ・ケア
初期診療の⼿引き Version 2.1 2020 年
https://www.pc-covid19.jp/files/guidance/guidance-2-1.pdf