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法人管理委員会

プロ野球選手への施術ミス報道について

プロ野球選手への施術ミス報道に対する公開質問状

2017年9月10日、読売ジャイアンツの澤村拓一投手が、「球団トレーナーによる鍼治療のミスで長胸神経麻痺が生じた可能性がある」との報道がなされた件についての「公開質問状」を以下に掲載いたします。(2017/9/30)

公開質問状


平成29年9月 21 日
株式会社 読売巨人軍
代表取締役社長 久保 博 殿

はり治療による長胸神経麻痺に関する報道についての照会

謹 啓
秋涼の候 貴社におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます
公益社団法人 全日本鍼灸学会、日本伝統鍼灸学会、公益社団法人 日本鍼灸師会、公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会、公益社団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会、公益社団法人 全国病院理学療法協会、社会福祉法人 日本盲人会連合、公益社団法人 東洋療法学校協会、日本理療科教員連盟は、国家資格である「はり師」と「きゅう師」いわゆる鍼灸師が所属する団体であり、鍼灸学術の振興ひいては国民に安全で安心な治療を提供することを目的とするものであります。

去る 9 月 10 日(日)に、貴社所属のトレーナーの医療過誤に関する記事が複数の新聞社によって伝えられました。記事では、はり治療によって長胸神経麻痺が発生したとのことですが、業界全体が大変な驚きをもって報道を受け止めているところであります。また、鍼灸師のみならず、一般の患者ならびにマスメディアからも多数の問合せが届いており、その多くは一般的なはり治療でそのような医療事故は起こりえるのか、また、今後の事故を防止するためにも施術内容ならびに診断に至った経緯を明らかにして欲しいというものであります。

本報道は、現在、はり治療を受けておられる患者とそのご家族、これから治療を受けようと考えている方、治療にあたっている鍼灸師ならびに関係者に大きな不安を与えております。我々鍼灸関連団体としましては、事件の詳細を明らかにすることによって、上記問い合わせに対して可能な限り正確な説明を行い、鍼灸師により適切な安全対策を講じさせ、今回の報道で生じたはり治療に対する国民の不安を軽減したいと考えております。

つきましては、施術から診断に至るまでの詳細な経緯について別添の質問状(2 枚)にご回答いただきますようお願い申し上げます。また、可能でありましたら担当医師、鍼灸師に直接お話が伺えればと考えております。ご多用のところ大変恐縮ですが、本照会の主旨をご理解いただきご協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。なお、本照会状は、報道各機関にも公開させて頂くことを申し添えます。

末筆ながら、貴社の益々のご発展を祈念いたします。

謹 白
公益社団法人 全日本鍼灸学会
 会長 久光 正
日本伝統鍼灸学会
 会長 形井秀一
公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
 会長 伊藤 久夫
公益社団法人 全国病院理学療法協会
 会長 平野 五十男
公益社団法人 東洋療法学校協会
 会長 坂本 歩
公益社団法人 日本鍼灸師会
 会長 仲野 弥和
公益社団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会
 会長 安田 和正
社会福祉法人 日本盲人会連合
 会長 竹下 義樹
日本理療科教員連盟
 会長 栗原 勝美

連絡先 〒151-0053 渋谷区代々木 1-55-10 学園ビル 10 階 1001 号室
公益社団法人 全日本鍼灸学会 事務局
tel: 03-6276-6751 fax: 03-6276-6752 e-mail: honbu@jsam.jp

平成29年 9月21日
質問状①
本件におきまして、診察ならびに診断されました医師の先生にお聞き致します。

Q1. 報道によれば長胸神経麻痺とありますが、本件の正確な診断名とその理由(所見)をお聞かせください。

Q2. 報道によれば、はり治療が長胸神経麻痺の原因とありますが、これは事実でしょうか?
もしも事実であるならば、はり治療を原因とした理由(因果関係)と他の原因を除外した理由をお聞かせください。また、はり治療前から長胸神経麻痺を疑う所見がなかったかお教えください。

Q3. 患者の転帰についてお聞かせ下さい。

Q4. もしもはり治療が長胸神経麻痺の原因であると考えであるならば、どのような安全対策を施せば、今回の事故を避けることができたとお考えでしょうか?ご意見をお聞かせ下さい。

Q5. 上記に加えて、本件に対するご意見ご感想をお聞かせ下さい。

平成29年9月21日
質問状②
本件におきまして、はり治療を行われたトレーナーの先生にお聞き致します。

Q1. 本件に関するはり治療の詳細(主訴と治療の目的、使用鍼のサイズ、刺鍼部位・方向・深度・強度、等)についてお教え下さい。

Q2. 報道によれば、はり治療が長胸神経麻痺の原因とありましたが、刺鍼時あるいは刺鍼後に神経を傷害したことを示唆する現象(強い鍼響、痛み、シビレ、筋の単収縮、等)
はございましたか?

Q3. 上記の質問を踏まえて、はり治療が今回の事故の原因とお考えでしょうか?
もしもそうであるならば、どのような施術行為が原因であったか、どうすればこれを防ぐことができたとお考えでしょうか?ご意見をお聞かせください。

Q4. 上記に加えて、本件に対するご意見ご感想をお聞かせ下さい。


公開質問状に対する読売巨人軍回答

上記「公開質問状」に対する「読売巨人軍回答」を以下に掲載いたします。(2017/11/30)

読売巨人軍回答


公益社団法人 全日本鍼灸学会
 会長 久光 正 様
日本伝統鍼灸学会
 会長 形井 秀一 様
公益杜団法人 全日本鍼灸マッサ一ジ師会
 会長 伊藤 久夫 様
公益社団法人 全国病院理学療法協会
 会長 平野 五十男 様
公益社団法人 束洋療法学校協会
 会長 坂本 歩 様
公益社団法人 日本鍼灸師会
 会長 仲野 弥和 様
公益社団法人 日本あん摩マッサ一ジ指圧師会
 会長 安田 和正 様
社会福社法人 日本盲人会連合
 会長 竹下 義樹 様
曰本理療科教員連盟
 会長 栗原 勝美 様

冠省 貴団体から9月21日付文書「はり治療による長胸神経麻痺に関する報道についての照会」 が当球団に送達されたことを受けて、当球団は当該選手を診察した複数の医師から、あらためてお話をうかがいました。

いずれの医師も、選手の症状等から長胸神経の不全麻痺であり、それに伴う前鋸筋の機能低下であるとの診断に変わりはないと話されています。また、発症時期や当該選手の問診等から、長胸神経の麻痺は、当球団のトレーナーが行った鍼治療が原因となった可能性が考えられると答えられました。ただし、鍼治療以外にも、強い力がかかる他の外的要因によって長胸神経の麻痺が生じた可能性もあるとの意見も出ました。

お話をうかがった医師はいずれも、経歴や専門分野における実績等に秀でており、当該選手に関する診断は信頼に値するものと当球団では考えています。

当該選手の長胸神経麻痺はすでに回復しております。また、当該選手を施術した卜レ一ナーは、現在も当球団のトレーナーとして勤務しています。当球団は鍼治療が有効でぁることを十分認識しており、現在も多くの選手やス夕ッフに対して鍼治療が行われています。今後も引き続き鍼治療を活用していく方針に変ゎりはありません。

末筆ながら、貴団体の益々のご発展を祈念しております。
草々

2017年11月7日
株式会社 読売巨人軍

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