日本鍼灸師会50年の歩み その6

目次

日鍼会50周年記念誌 日本鍼灸師会50年の歩み その6

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昭和61年~平成2年

各都道府県師会宛AIDSの予防対策の周知と消毒の徹底指導:

 日鍼会ではかねてからオートクレーブ、使い捨て鍼等の使用について共済部及び学術部が中心となって会員の指導を精力的に努めてきた。

 昭和61年にはAIDS(エイズ)が連日のようにTV、ラジオ、新聞、雑誌等で報道され、一部マスコミから鍼治療による感染の可能性が過大に取り上げられ患者に不安を与えかねない状況にあった。

 このような状況から昭和61年2月7日付、日鍼発第33号により、各都道府県師会長宛に小川会長と加藤学術部長の連名で「エイズ(後天性免疫不全症候群)と消毒について」の文書によってエイズ対策の強力な指導を行った。

 また、日本鍼灸新報61年4月号では、エイズについての詳しい情報を掲載すると共にB型肝炎と同じ方法で処置すれば安全との情報とその対処の方法を具体的に掲載し指導した。

 同年10月号の鍼灸新報にも、各ブロックが行う鍼灸伝達講習会の指導書として「消毒、滅菌、殺菌」に関する資料を学術部がまとめたものを鍼灸新報に掲載して全会員に感染防止に関する啓蒙をした。

同意書の様式と円滑な実施の通達が出される:

 昭和61年4月21日、保険発第37号、厚生省保険局医療課長通知「はり・きゅうの施術について」によって、日鍼会独自の1年にわたる同意書改善運動により前進することができた。

 この運動は、医師が同意する場合の条件となっている「医師による適当な治療手段のないもの」を「鍼灸師による鍼灸施術を行うことが適当なもの」に改めることを最重点に努力が重ねられた。残念ながらこのことは今回見送られたが、要望した3項目の内、同意書取扱いを容易にする様式制定と老人保健の場合と同様に初療の日からケ月を経過した時点においての同意書簡素化が実現し、その上これらの処置が鍼灸施術の円滑な実施を図るためという行政の考え方が通知の中で明確に示されたことは大いに評価されるべきである。

同意書の取扱いについて日本医師会長の通知が出される:

 昭和61年4月23日、日医発第79号(保12)、日本医師会長より都道府県医師会長宛に「はり・きゅうの施術に関する同意書の取扱いについて」という通知が出されて、今回の保険発第37号医療課長通知の趣旨に基づいて、適正な実施の推進に協力するよう好意的な通達を出してもらうことができた。ご尽力いただいた関係議員、行政当局、日本医師会など各方面のご理解に応え、健全な取扱いを着実に進め、国民福祉の増進に寄与できるよう精進すべきである。

明治鍼灸大学で第1回卒業式を挙行:

 日本で唯一の鍼灸師養成大学である明治鍼灸大学で、昭和62年3月10日、大学昇格後第1回の卒業式が挙行され、92人の鍼灸学士が誕生した。同大学は、昭和53年に日本最初の短期大学として創設以来、5年目の昭和58年に大学に昇格、そしてこの度の卒業式となった。

日本鍼灸師会倫理綱領を制定:

 本会では、医療の一端を担う鍼灸師として当然守るべきモラルを確立するために、昭和62年4月に「日本鍼灸師会倫理綱領」を定めた。

 自らを慎み、人を思いやり、私欲に走らず、自然の道に従う、学術の研鑽と同時に高い倫理性を具えることこそ鍼灸の進歩発展につながるものであり、鍼灸師の社会的信頼を高めることにつながる。その意味でこの倫理綱領を制定したことは意義深いものである。

はり師、きゅう師等、厚生大臣免許に、法律第217号大幅な改正なる:

 日鍼会など業界7団体が昭和62年当初から陳情を続けてきた「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」の改正が、議員立法により、昭和63年5月19日に衆議院の社会労働委員会(稲垣実男委員長)、翌20日に衆議院本会議でそれぞれ全会一致で可決され、同5月24日に参議院の社会労働委員会(関口恵造委員長)、翌25日に参議院本会議で可決成立し、あはき法の一部を改正する法律として昭和63年5月31日に法律第71号で公布された。

 改正の主旨は、社会の要請に応えて鍼灸師等の資質の向上を図ろうとするもので、その内容は資格試験を従来の都道府県から国家試験に高め、厚生大臣による免許とすること。また、養成施設の入学資格を大学入学資格に引き上げるとともに、修業年限を3年以上に改めること。さらに厚生大臣の指定を受けて国家試験及び登録に関する事務を行う財団を新設することなどである。こうした法制定以来40年ぶりに行われた大幅な法律改正により、日鍼会が長年鍼灸師の資質の向上について常に抱いてきた理想への第一歩が進められた。

スポーツ障害キャンペーンのポスター作成:

 昭和63年10月20日、スポーツ障害キャンペーンを実施するにあたり、普及部がポスターを作成し各師会や会員に頒布することになった。その他、普及部では、「はり・きゅう保険読本」や「はじめてはり・灸治療を受けられる方のために」も作成頒布し、年末年始にはポスターを作成して無料配布するなど鍼灸の普及活動に努めた。

小川会長から谷口健藏会長へ:

 平成2年5月13日・14日に開催された平成2年度通常代議員会・総会で、小川晴通会長は、鍼灸業界の悲願であった法律の一部改正がなり、その前提条件である東洋療法研修試験財団の設立は、業界の約束ごとでもあり総力を挙げて努力してきたところであるが去る3月28日に設立が許可されたことを報告し、財団設立準備の段階から財団理事就任について推薦を受けていたので、理事会、師会長のご了承をいただいて本日の総会を最後に辞任し、今後は財団理事として資質の向上と業界の発展に尽くしたいと挨拶し、第11号議案の役員補欠選挙では、立候補者と定数が同数のため無投票で改選され、後任会長に谷口健藏氏、副会長に中村万喜男氏、理事に星光久氏がそれぞれ選任され就任することになった。

 小川会長は、日保連の解散とその引き継ぎ、健保推進協議会の運営、科学万博への鍼灸出展、35周年記念式典、保発第37号による同意書の緩和、法律の改正、会員共済制度の設立、東洋療法研修試験財団の設立など、着実に鍼灸師会としての事業を推進され、その功績は大きい。

日鍼会創立40周年記念式典:

 平成2年5月14日、午前中の総会に引き続いて午後から椿山荘にて創立40周年記念式典が盛大に開催され、この席で多年にわたり鍼灸業界に貢献された189名の方々に日本鍼灸師会の会長表彰が行われた。

 来賓祝辞には、津島雄二厚生大臣、斎藤邦吉衆議院議員、羽田春 日本医師会会長、山村秀夫全日本鍼灸学会会長から心のこもった励ましのお言葉をいただき、晴れやかに、また粛々と行われ、創立40周年の式典を滞りなく終了した。

 また、引き続き催された祝賀会には戸井田三郎前厚生大臣をはじめ田中明夫東洋療法研修試験財団理事長、渡辺秀央自由民主党全国組織委員長等、政界、各界代表の暖かいお祝いの言葉があり、長野県鍼灸師会の丸山忠会長による乾杯の発声により高らかに乾杯をした。役員や会員、それに現役から退いた諸氏との思い出話に旧交を暖め、華やかで和気藹々のうちにお開きとなった。

青年部結成20周年記念大会を開催:

 平成2年8月25日・26日の両日、第27回青年部全国集会in京都が組織部青年部会結成20周年を記念して京都の平安会館、翌26日は明治鍼灸大学にて盛大に開催された。

 今回の集会は特に結成20周年ということで、第1日目の式典では26名の青年部役員、並びに元役員に対して会長感謝状が手渡された。

厚生大臣指定講習会全国各地でスタート:

 法律が一部改正されたことにより、鍼灸師などの資質向上を図るための厚生大臣指定講習会に関する各都道府県の実施協議会が続々と設立され、平成2年度(初年度)の厚生大臣指定講習会は、平成2年11月日の北海道の札幌第2会場を筆頭に、本州では岐阜県、四国の愛媛県、九州の宮崎県等が開催し、平成3年3月10日から開催した島根県まで全国27都道府県で開催され、11,074名が受講した。

 なお、この厚生大臣指定講習会は、平成3年度、平成4年度の3年間に亘り行われ、それを受講できなかった人のために、平成5年度は大阪、平成6年度は東京で開催され、総計23,893名がこの講習会を受講した。

平成3年~平成12年

明治鍼灸大学に大学院修士課程を新設:

 文部省の大学設置・学校法人審議会は、平成3年4月から8大学院の新設と14研究科(12大学院)、41専攻・課程(25大学院の増設を認めるよう井上文部大臣に答申し、答申通り4月1日から認められた。

 明治鍼灸大学大学院は、大学院新設の部で、鍼灸学研究科鍼灸学専攻定員8名が認められた。

雲仙・普賢岳噴火被災会員に対する募金のお願い:

 平成3年6月に雲仙・普賢岳が噴火し、長崎県島原地方に大きな被害を生じたが、日鍼会では平成3年6月27日、谷口会長名で全国師会長宛に募金のお願いの通知を出し、被災会員への支援を呼びかけた。

 また、長崎県鍼灸師会は、日本赤十字社長崎県支部の要請により、赤十字活動(被災者に対する鍼治療)を実施し、献身的な奉仕活動を行い協力した。

 なお、日鍼会の普賢岳噴火被災会員に対するお見舞いの募金活動は約8ケ月間にわたり行われ、平成4年1月末の時点で合計588万円余の金額が寄せられ、長崎県鍼灸師会に義援金として贈られ、長崎県鍼灸師会の喜多会長や島原の支部長よりも数回にわたりお礼状が届けられた。

第28回青年部全国集会開催:

 平成3年7月20日・21日の両日、東京の第一ホテル大森にて第28回青年部全国集会in東京が開催された。

 大会テーマは「現状の認識と意識の高揚」、サブテーマは「現在・過去・未来」で、講師と演題などは次の通りであった。

講演:
これからの鍼灸院経営日鍼会理事今井 義晴
耳鼻科領域の鍼治療自治医科大学講師小野 忠彦
患者心理の把握と対応日本プライマリーケアー学会評議員岩崎 靖雄
討論会:

現在・過去・未来(過去5年間の報告と問題点及び今後の展望)について出席者一同真剣に討議した。

なお、第1日目の夜の懇親会では屋形船に乗って墨田川の旅情を楽しみ、江戸情緒を満喫した。

地方公務員共済の委任が前進:

 平成4年現在、9都府県で地方公務員共済が委任による取扱いがなされているが、その他の道府県では中央が認めないので実施出来ないというのが実情であった。

 そのような中、東京都鍼灸師会の中村万喜男会長は警察共済や市長村職員共済の委任による取扱いを宮崎県の中原嘉彦会長の協力を得て精力的に折衝し、東京都の警察共済、並びに市町村職員共済の委任取扱いの了承を取りつけた。このことにより全国的な要望に応えるため、この4つの共済組合を統括する共済組合本部に対して再度折衝を開始し、度重なる折衝の結果、地方支部から委任に関する問い合わせがあった場合には委任に反対しないという了解が得られ、地方公務員共済の委任が大きく前進することになった。因みに委任が可能となった共済組合の本部は、全国市町村共済組合、地方職員共済組合、警察共済組合、公立学校共済組合の4共済組合である。

鍼灸安全性委員会が「鍼灸治療における感染防止の指針」を発行:

 鍼灸治療における安全性ガイドライン委員会は、平成3年4月に日鍼会などの業界、明治鍼灸大学などの大学、養成施設、学校協会、セイリン化成等からの代表が集まり、鍼灸の安全性に関する進歩発展を図る目的で「安全性ガイドライン」を作成することを決定した。

 それを受けて、各団体、各委員、各執筆者のご協力を得てこの程完成し、平成4年3月31日、「鍼灸治療における感染防止の指針」が発行された。この指針は、鍼灸治療に欠かせない貴重な指針で、この指針を厳守することで鍼灸治療の安全性は飛躍的に高まり、鍼灸の進歩発展に大きく貢献するものである。

平成4年度通常代議員会・総会開催:

 平成4年5月9日・10日の両日、東京の椿山荘にて平成4年度通常代議員会並びに総会が開催され、第1号議案から第10号議案まで全ての議案が提案通り承認された。

 尚、この総会で会費が改定され、14,000円から15,000円になった。また、財団設立に関して寄付していただいた財団設立基金積立金から、「鍼灸治療における感染防止の指針」を購入し、全会員に無料で配布することを決定した。

日鍼会、NTT.JR.JTの3共済に受領委任を申し込む:

 平成5年1月19日、本会は谷口健藏会長名で3共済組合理事長宛に「はり、きゅうに係る療養費の受領委任につて」申し込むと同時に、はり、きゅうに係る療養費の受領委任に関する申し合わせ、及び療養費の受領委任につての遵守事項を提示した。

第1回はり師、きゅう師などの国家試験実施される:

 平成5年2月27日(土)・28日(日の両日、全国都道府県50ケ所の会場で実施され、3月30日に合格者氏名の発表をもって全日程を終了した。受験者数と合格者数は次の通りであった。

第1回あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家試験結果
資格別受験者数合格者数合格率
はり師2,363名2,098名88.8%
きゅう師2,358名2,079名88.2%
あん摩マッサージ指圧師1,883名1,726名91.7%

平成5年度通常代議員会・総会で谷口会長から中村万喜男会長へ:

 平成5年5月14日・15日の両日、東京の椿山荘にて平成5年度通常代議員会並びに総会が開催され、安藤讓一議長、田中博副議長により、第1号議案から第9号議案まで全ての議案が提案通り承認された。

 尚、この総会で専門領域研修制度の創設と専門領域の第1回テーマは「スポーツ傷害」に決定、また職能型国民年金基金の設立が決議され、財務関係では財団設立基金積立金を一般会計に繰入れ、別途積立金とする予算案が承認された。

 また、任期満了に伴う役員改選で谷口健藏会長が勇退し、黒須幸男、中村万喜男両副会長が会長候補に立候補した。その他の副会長、理事、監事、代議員会議長、副議長は定数を越えていなかったので議長はこれを議場に諮り当選とした。

 会長選挙では、投票の前に両会長候補者の所信表明を行い、その後投票、開票の作業が行われ、中村万喜男氏が会長に当選した。

第30回青年部全国集会in宮城開催:

 平成5年7月17日・18日の両日、第30回青年部全国集会in宮城が仙台市にて開催された。メインテーマは「現状の認識と意識の高揚」サブテーマは「めざせ!スポーツ鍼灸スペシャリスト」で、演題と講師は次の通りであった。

講演:
青年鍼灸師が生き残るために!日本鍼灸師会組織部長熊崎勝馬
スポーツと鍼灸「何をすべきか」筑波技術短期大学教授森山朝正
スポーツ分野における鍼治療の可能性筑波大学心身障害学系宮本俊和
分科会:ワンポイント・レッスン(実技)
スポーツ選手の肩関節の障害をどう診るか筑波大学心身障害学系宮本俊和
スポーツ選手の下肢の障害をどう診るか筑波技術短期大学教授森山朝正
討論会:
マイナーからメジャーへ鍼灸師の意識改革と経営戦略 座長樋口秀吉
演者:

日鍼会元青年部長長谷川栄一、日鍼会元青年部長 佐藤 一

厚生省後援の学術講習会のビデオを会員に頒布開始:

 厚生省後援の学術講習会は、一流の講師陣により最新の医学情報を毎月提供して好評を得ているが、開催地が東京のため地方会員が参加しにくいという声も一部にあった。

 学術部では、この声に応えるとともに有益な医学情報を一人でも多くの会員に提供することが重要と考え、平成6年の通常代議員会・総会でこの講習内容をビデオに収録し、希望する会員に頒布することを提案し了承された。

NHKニュース7で本会の臨床研を取材:

 平成6年9月17日、本会の鍼灸臨床指導者講習会にNHK7時のニュース「特集レベルアップする“はり治療”」の取材があった。

 取材目的は、鍼灸師全体のレベルアップのために日本鍼灸師会が現在どのようなことを行っているのか、というものでった。

 取材は治療技術の共有化、各種の徒手検査法を導入して再現性を高めることなど、臨床研の「症例検討会」を中心に行われ、9月21日の午後時から《NHKニュース7》の中で、開業鍼灸師の資質向上の講習会として放映された。

労災保険の支給、一年限定の通達は違法と判決:

 平成6年11月30日、大阪高等裁判所で「はり・きゅうの治療費に対する労災保険の支給を一律一年間に限った労働省通達は違法」との判決が下され、その後、労働省も控訴することを断念したので確定した。

阪神淡路大震災発生、各師会が救援活動:

 平成7年1月17日、阪神淡路地方を中心とした大地震により、兵庫県南部、特に神戸市内に甚大な被害が続出し、震災犠牲者5,480人、負傷者34,900人、全壊家屋91,916件、半壊家屋79,015件、その他、鉄道、道路、電気、ガス、上下水道等、その被害は数え切れない。

 兵庫県鍼灸師会でも平成7年2月1日現在で、会員1人、家族3人が死亡し、家屋の全半壊が50件、軽損壊が41件、安否連絡不通の会員が10人で、今後の再興の見通しもつきにくい状況である。

 日鍼会では、とりあえず300万円の見舞金を緊急に兵庫県鍼灸師会に贈るとともに、各師会を通して全国の会員に対して義援金の呼びかけを行った。

 このような中で、兵庫県鍼灸師会の20名以上の会員は、被災者に対してボランティア活動を開始したのをはじめ、大阪府鍼灸師会も2月12日から3月末日までを第1期として組織的にボランティア活動を開始し、近畿ブロックの各師会もこれに同調した。

 これらの動きと共に、日本鍼灸師会も平成7年2月9日に中村万喜男会長名で全国各師会長に「阪神大震災の被災状況とボランティア活動について」の文書を発信し、日鍼会に災害対策本部を設置して近畿ブロック以外の師会のボランティアの受け入れ窓口になると共に、近畿ブロックとともに連絡手続きを設置してボランティア活動を組織的に実施した。