日本鍼灸師会 鍼灸メンタルヘルス事業
鍼灸メンタルヘルスチーム
日本鍼灸師会 鍼灸メンタルヘルス事業
日本鍼灸師会では、鍼灸師における自殺対策及びメンタルヘルスへの対応について、調査・研究・検討を行うとともに、研修及び啓発活動、実態調査・研究事業等を通じて、鍼灸師のメンタルヘルス支援及び自殺対策に関する取り組みを推進しています。
本事業では、鍼灸臨床における自殺関連事象の実態を明らかにするとともに、鍼灸師が自殺関連事象に遭遇した際に必要となる知識や技能、教育・研修のあり方、地域の自殺対策において鍼灸師が担いうる役割について検討していきます。
鍼灸臨床における自殺関連事象の実態調査
調査の背景・目的
鍼灸師は、心身の不調を治療する国家資格を持つ専門職であり、全国で約13万人の鍼灸師が臨床に従事し、地域には約7万件の鍼灸の施術所があります。
鍼灸臨床においては、精神症状を主訴とする患者だけでなく、肩こりや腰痛などの身体症状で来院する患者からも、「死にたい」「消えたい」といった気持ちを打ち明けられるなど、自殺関連事象に遭遇することがあります。
しかし、鍼灸師がどの程度、どのような自殺関連事象に遭遇しているのかといった実態は、これまで明らかになっていませんでした。
そこで、日本鍼灸師会・鍼灸メンタルヘルスチームと東京有明医療大学の研究チームは、厚生労働大臣指定法人・一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターの助言のもと、鍼灸師を対象としたアンケート調査を実施しました。
本調査は、鍼灸臨床における自殺関連事象への遭遇実態を明らかにすることで、鍼灸師が自殺関連事象に遭遇した際に学んでおくべき知識や技能を検討し、今後の教育・研修に活かすことを目的としています。
あわせて、地域の自殺対策において鍼灸師が担いうる役割の検討につなげることを目指しています。
調査の概要
対象者
鍼灸師
アンケート期間
2026年7月13日~8月23日
調査方法
Googleフォームによる電子的調査
回答数
1,093人
調査内容
1. 自殺関連事象への遭遇経験
2. 遭遇した自殺関連事象
3. 当該患者の鍼灸治療における第一主訴
4. 自殺関連事象と遭遇したタイミング
研究費
JSPS研究費 JP10847528の助成により実施
倫理審査
市ヶ谷ひもろぎクリニック倫理審査委員会の承認済み
(承認番号:2026-5)
主な調査結果
鍼灸師の4割以上が自殺関連事象への遭遇を経験
1,093人の回答のうち、464人(42%)が、これまでの鍼灸臨床で自殺関連事象に遭遇した経験があると回答しました。
遭遇した自殺関連事象
遭遇した自殺関連事象では、「死にたい」などの発言が最も多く、そのほか、自傷行為、強い絶望感、危機的な行動の変化、家族や知人からの相談、自殺既遂(死亡)、自殺未遂などが挙げられました。
※複数回答
当該患者の鍼灸治療における第一主訴
自殺関連事象がみられた患者の鍼灸治療における第一主訴は、抑うつ・不安だけでなく、身体愁訴(肩こり・腰痛など)、不眠、慢性疼痛、慢性的な身体疾患、更年期症状、がん緩和ケアなど、多岐にわたっていました。
※複数回答
自殺関連事象と遭遇したタイミング
自殺関連事象は、初診時だけでなく、数回の通院の中や長期的な通院関係の中で把握されることが多く、家族・知人からの情報によって把握されたケースもありました。
※複数回答
調査結果から
今回の調査により、鍼灸臨床における自殺関連事象への遭遇実態が明らかとなりました。
自殺関連事象に遭遇している鍼灸師は4割を超え、「死にたい」といった言語的な訴えとして表面化することが多くみられました。
また、自殺関連事象がみられた患者は、抑うつ・不安だけでなく、身体愁訴、不眠、慢性疼痛などを主訴として鍼灸を受療していました。
さらに、自殺関連事象は、数回の通院や長期的な通院関係の中で把握されることが多いことが示されました。
本調査により、鍼灸臨床における自殺関連事象への遭遇実態が明らかとなり、鍼灸臨床の場が自殺対策との接点になりうる可能性が示唆されました。
今後は、自殺関連事象に遭遇した際の対応に関する教育・研修の整備と、地域の自殺対策における鍼灸師の役割について検討を進めていきます。
今後の取り組み
日本鍼灸師会・鍼灸メンタルヘルスチームでは、今後、自殺関連事象に遭遇した鍼灸師が一人で抱え込むことなく、患者の気持ちを受け止め、必要な支援につなげることができるよう、鍼灸師向けのゲートキーパー研修の実施を検討していきます。
あわせて、自殺リスクが疑われる患者への基本的な対応方法や、適切な支援機関へのつなぎ方を整理したガイド等の作成についても検討を進める予定です。
将来的には、鍼灸師が地域における自殺対策のゲートキーパーとしての役割を果たせるよう、関係機関と連携しながら体制を構築していきます。
詳細な調査結果については、以下の報告書をご覧ください。
「鍼灸臨床における自殺関連事象の実態調査結果」はこちら