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広報普及IT委員会

第17回公益社団法人日本鍼灸師会全国大会in愛知「ヒトを診る−東洋医学の全体観−」

 令和4年12月3日・4日、晴れた冬の日に、ウインクあいちを会場に「第17回公益社団法人日本鍼灸師会全国大会in愛知」が開催されました。新型コロナウイルス感染症第8波拡大も懸念されましたが、オンラインと現地でのハイブリッド方式で開催し、全国から626名(会場参加469名、オンライン参加157名)の多くの参加者が学びと懇親を深めることができま
した。二日間にわたり「ヒトを診る」という今大会テーマに沿って13の講演やシンポジウム・公開講座が用意され、東洋医学・西洋医学のスペシャリストたちによる多様な角度からの講演がおこなわれました。
 開会式では、要大会会頭・長谷川大会会長のあいさつの後、来賓の皆さまから、鍼灸業界への檄と、心温まる祝辞をいただきました。

 開会式の後は、大ホール・小ホールに分かれて講演会やシンポジウムが開催されました。大ホールでは「日々の臨床を評価しよう!臨床研究初めの一歩」と題して福島県立医科大学教授の鈴木雅雄先生にご登壇いただき、日々おこなっている臨床を研究の視点からも取り組む提案や、症例報告やデータ集積の手法などをご教授いただきました。臨床家の小さな研究が、地域住民の健康、われわれの診療行動、政策まで変える可能性があるというお話もありました。
 その後の講演2では、「病態水準に基づく患者の心の理解-何が起こっているのか、いかに関わるか-」と題して、藤田医科大学 臨床心理士の藤江理衣子先生にご講演いただきました。臨床心理士がどのように患者さん心理を理解し、判断していくか?その基準のひとつとして「神経症水準」「境界例水準」「精神病水準」を紹介し、関わりかたのヒントなどもお伝えいただきました。
 講演3「身体観察・鑑別診断」では、名古屋大学附属病院総合診療科医師の松久貴晴先生にご講演をいただきました。臓器特異性を持たない総合診療医の視点から、どのような疾患に対
しても「生物」「心理」「社会」面から対応することの大切さや、全身スクリーニング診察を行う際の「適切な型」についてもご紹介いただき、視診・聴診・触診・打診などを動画も交えながらご紹介いただきました。
 講演4「医療面接の意義と、医学教育における医療面接教育の現状」では、名古屋大学附属病院総合診療科医師の髙橋徳幸先生にご登壇いただき、現在医学教育で行われている医療面接の実際や、われわれも実践可能なヒントが詰まった現場でのコミュニケーション技法などをご紹介いただきました。
 ランチョンセミナー「折鍼から学ぶ鍼施術の安全性」では、セイリン株式会社稲葉巧社長より、折のメカニズムについて詳しく解説をしていただきました。

 実技「てい鍼術- TST とは-」では、呉竹学園臨床研究センター船水隆広先生より、オリジナル「TSTてい鍼」の紹介や、モデルを用いて「気」「経絡」の調整方法や美容法、精神疾患の治療法など、繊細で多様な実技披露がおこなわれました。随所で東洋医学への深い造詣や、治療に対する美学が感じられる実技披露でした。
 シンポジウム1「病鍼連携について」では、福島県立医科大学教授として研究・教育に携わる鈴木雅雄先生、慶應義塾大学内で鍼灸臨床を実践されている鳥海春樹先生、本会副会長で介護サービス事業所経営もされている中村聡先生から、地域の中で鍼灸師がどのような立ち位置を目指し、行政や医療職・介護職と連携をとり地域医療を実践していくのかをお話しいただきました。
鍼灸師像の定義から、医師とのコミュニケーション、鍼灸師の教育まで白熱した議論が続き、今後の鍼灸師の在り方に一石を投じたシンポジウムとなりました。
 危機管理委員会主催の講演では、「施術所における感染対策とリスクマネジメント・リスクマネジメント研修会-アンケート集計結果-」として、東京有明医療大学 菅原正秋先生より感染症対策の具体的方法と、折鍼や伏鍼のリスクマネジメントについてご紹介いただきました。今年3月のプロ野球選手に対する折鍼事故が大きな問題としてメディアでも取り
上げられましたが、事故を受けて開催したリスクマネジメント研修会参加者からのアンケート集計結果を、危機管理員会 是元副委員長より公表いただきました。続いて行ったシンポジウム2「連携で支える災害鍼灸マッサージ」では、鍼灸師会、DSAM、NPO、災害ボランティア団体、災害支援窓口の各代表にご登壇いただき、それぞれの立場からの災害に対する取組みをご紹介いただきました。そして鍼灸マッサージの各団体が、平時から連携・協力を進め、一体となって被災地支援活動をおこなう必要性があることを訴えられました。
 シンポジウム3では、総合診療医の第一人者である伴信太郎先生、総合診療医で鍼灸師でもある寺澤佳洋先生、経絡治療の第一人者馬場道敬先生、北辰会代表藤本新風先生にご登壇いただき、東西医学の立場から、「ヒトを診る」をテーマに語っていただきました。西洋医学・伝統医学の学問の背景や時代背景などは違っても、「ヒト」を診ることへの想いや技法は共通のものが多く、ヒトがヒトを診るという本質的な原則をあらためて考え直すことができるシンポジウムでした。座長の長谷川先生の「鍼灸は、患者に安心を与え、不安を取り除く」とおっしゃったなかに、臨床における大きなヒントがあるとも感じました。
 講演5第一部では、オンラインで首藤傳明先生より「鍼灸治療が有効な疾患とその治療法」のご講演をいただきました。「鍼灸治療が最も効果的なのは内臓疾患と心の病」であり、「経絡治療で五臓を整えると精神が整う」と臨床63年の知見を語っていただきました。第二部「海外におけるお灸の普及」では、カナダ在住の水谷潤治先生より、海外のお灸事情や水谷式灸療法の実技をご披露いただきました。
 青年委員会ワークショップ「鍼灸クイズ大会-つながろう、学生の輪!-」では、全国の学生が5チームに別れてクイズに挑戦をしました。経穴・解剖学・生理学・ご当地問題・東洋医学概論な
どの出題があり、浮き物通し競争もおこなわれました。参加チームには豪華賞品が用意されました。他校の学生同士が協力して問題に取り組み、大いに盛り上がり、「輪」が繋がるワークショップとなりました。

 公開講座「多職種で人を診る統合ヘルスケア」では、名古屋大学大学院総合診療医学客員研究員の伊藤京子先生から、予防から健康管理、病の回復まであらゆる段階で多職種による多様な治療法で介入、支援をおこない、患者中心の医療を目指す「統合ヘルスケアチーム」の紹介と提案をいただきました。患者が抱えるさまざまな健康問題に各種療法の専門家が関わることで解決できることが多くあり、お
互いが補完的に協力し合えるネットワーク構築のお話もいただきました。今大会のハイブリッド方式の配信、アーカイブ視聴の編集は専門業者の手を借りず、大会実行委員会の手作りでの運営となりました。児山大会実行委員長の「このメンバーがいたからやってこれた」の言葉のなかに、大会実行委員の多大な努力と絆を感じることができました。次回は令和5年10月21日・22日に大阪府泉佐野市での開催となります。市民参加型の新しい形での全国大会で顔を合わせて学びと懇親を深めましょう。             

(報告:広報普及IT委員会 瀧本一 )

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(広報普及IT委員会)

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